Clinical Evidence Viewer(以降Viewer)と Clinical Evidence Analyzer(以降Analyzer)は、Clinical Information of Variants in Cancer (CIViC) のエビデンス(evidence_item)を検索選択し、結果を閲覧あるいは大規模言語モデル(large language model, 以降LLM)で分析するスクリプトです。Analyzer ver. 1.52では遺伝子変異検索が主機能で、治療薬・疾患のキーワード検索はオプションです。CEA-MPXは治療薬・疾患のキーワード検索が主機能です。使っているLLMはPM-Chatbotと同じです。
説明書の対象となるスクリプトは次の2つです。
Clinical Evidence Viewer
Clinical Evidence Analyzer ver. 1.52
CEA-MPX
CIViCとは
近年、がんの遺伝的多様性や変異の特徴に関する理解が飛躍的に進み、個別化医療の実現が加速しています。現在では、数多くの分子変異を標的とした治療が可能となりました。しかし、ゲノム医療では患者に見られる変異の解釈がボトルネックとなっており、多くの医療機関や研究機関が独立した「情報の孤立状態」の中で解釈を進めています。遺伝子変異の解釈の更新が必要だが、コミュニティの合意が欠ける状況が続いています。個別化医療の目標達成には、解釈情報の中央集約、自由なアクセス、正確な解釈が必要です。既存のデータベースは公開制限や改善の遅れなど課題が多く、CIViCは、これらの問題を解決するためにつくられたオープンアクセス型知識基盤です。
CIViCでは、国際的で学際的な専門家チームが、正確な出典情報を持つ遺伝子変異の解釈を作成し、データベースとして最新の状態で提供しています。一般からの投稿も受け付けていますが、専門家によるレビューの後で公開されることになっています。
エビデンスレベルと格付け
CIViCのエビデンス(evidence_item)レコードは、エビデンスの簡単な記述、PubMed IDのほか、疾患、エビデンスの種類(diagnostic, predictive, prognosticなど)などの属性情報が記載されています。エビデンスの解釈を補助するために、エビデンスレベル evidence level と格付けevidence ratingの2つの評価指標が付加されています。
エビデンスレベル evidence level
エビデンスレベルは、エビデンス項目を支持する研究の頑健性を示しています。
| レベル | 名称 | 定義 |
|---|---|---|
| A | Validated association | 臨床医学において証明された/コンセンサスの関連性 |
| B | Clinical evidence | 臨床試験またはその他の主要患者データが関連性を裏付ける |
| C | Case study | 臨床ジャーナルからの個々の症例報告 |
| D | Preclinical evidence | In vivoまたはin vitroのモデルで関連性が確認された |
| E | Inferential association | 間接的な証拠 |
Validated association(A)のエビデンスは、がん診療における分子プロファイル(バリアント)の関連性が証明されているか、臨床的なコンセンサスが得られています。通常、これらのエビデンスは第III相臨床試験を記述しているか、関連するFDA承認のコンパニオン診断薬です。Clinical evidence(B)は通常、臨床的関連を支持する大規模臨床試験またはその他の主要な患者データです。これらのエビデンス項目には通常、主張を支持する5人以上の患者が含まれています。Case study(C)は、臨床雑誌に掲載された個々の症例報告です。 Preclinical evidence(D)は、臨床的主張を支持するin vivoまたはin vitroの実験(細胞株やマウスモデルなど)から得られたものです。最後に、Inferential association(E)は、分子プロファイル(バリアント)と提供された臨床エビデンスを間接的に関連付けるものです。
格付け evidence rating
Evidence ratingは、要約されたエビデンスの質に対するキュレーターの信頼度を反映しており、1~5の5段階で採点されます。
| 格付け | 定義 |
|---|---|
| 5 | 学術的に権威のある研究室やジャーナルからの、強力で裏付けのある証拠。実験が適切に管理され、結果がきれいで、複数の複製で再現可能である。独立した方法で確認された証拠。統計的に十分な検出力がある。 |
| 4 | 強く、十分に裏付けられた証拠。実験は十分にコントロールされており、結果は説得力がある。予想された結果との食い違いがあっても、きちんと説明されており、気にならない。 |
| 3 | エビデンスは説得力があるが、幅広い実験によって裏付けられていない。小規模なプロジェクトや、多くの追試験を伴わない新規の結果である可能性がある。予想された結果との食い違いは説明されており、気にならない。 |
| 2 | エビデンスは実験データによる裏付けが十分ではなく、フォローアップデータもほとんどない。学術的にインパクトの低い学術誌からの発表である。実験が適切な対照を欠いていたり、サンプルサイズが小さかったり、統計的に説得力がなかったりする。 |
| 1 | クレームは実験的証拠によって十分に裏付けられていない。結果の再現性がない、またはサンプル数が非常に少ない。新規の主張を検証するためのフォローアップが行われていない。 |
Viewer/Analyzer ver. 1.52の検索システムの特徴と使用法
CIViCは、基本的にエビデンスのデータベースなので、遺伝子変異の表示法は統一されていません。例えばEGFRを例に上げると、L858R, exon 19 deletionの他に、L858R OR exon 19 deletionという項目があります。そのため検索システムを少し工夫しています。
① 遺伝子変異を検索して選択
遺伝子名の入力により、CIViCに収納されている遺伝子変異がすべて表示されます。検索したい遺伝子変異を選択します。
② 選択した検索条件
選択した遺伝子変異が表示されます。確認後検索ボタンをクリックします。
エビデンスレベルを選択可能です(デフォルトは全選択)。
CIViCの治療薬(Therapies)と疾患(Disease)のカラムをキーワード検索できます。
キーワードリスト: 治療薬(Therapies) 疾患(Disease)
③ CIViC 検索結果(Viewer)/検索結果のダウンロード(Analyzer)
検索されたCIViCのエビデンス・レコードのファイル(tsv方式)とPubMedアブストラクト(txt)のダウンロード・リンクが表示されいます。Viewerではエビデンス・レコードが画面表示されます。
CEA-MPXの検索システム
CEA-MPXはClinical Evidence Analyzer Molecular Profile Batsuの略で、Clinical Evidence Analyzerの遺伝子変異検索機能を除いたものです。CIViCの全データを治療薬と疾患で検索します。
ver. 1.52は遺伝子変異選択後でないと治療薬と疾患のキーワード検索ができません。ツール開発の都合上別のアプリケーションになっています。
LLMの使用方法
データをLLMへ送信する
① ダウンロードファイルが作成されていることを確認します。
② プロンプトにLLMへの分析の指示を書き込みます。例:各PubMedアブストラクトを100文字で要約;診療ガイドライン(URL)を参照して分析、など。
③ 送信ボタン(「問い合わせる」)をクリックします。LLMには次の順に情報が送信されます。
プロンプトの内容
CIViCのエビデンス・レコード(tsv方式)
PubMedアブストラクト(txt)
留意点:PubMedアブストラクト文書の先頭にCIViCのエビデンスレベルと格付けを付加しています。プロンプト内での指示で分析に活用することができます。PubMedアブストラクトが多すぎると処理できないことがあります。
ダウンロードファイルの使い方
購読しているLLMがあれば、2つのダウンロードファイル(CIViCエビデンスレコード、PubMedアブストラクト)を添付し、適切なプロンプトを書き込めば、Analyzerと同じことができます。
ライセンス
LLM、CIViC、スクリプト共通:研究用です。
LLM:病院においても医師が個人で使用している限り、ライセンスの問題は発生しません。しかしながら施設利用では、例えばAPI キー・クレジットの施設負担など、ライセンスに抵触する可能性があります。大学・非営利研究機関での使用にはライセンスの問題はありません。
CIViC:CC0 1.0 Universal、著作権は放棄されています。
スクリプト:CC BY-NC-ND 4.0 International、著作権は管理者(加藤菊也)にあります。
リンク
CIViC (Clinical Interpretation of Variants in Cancer) database site
Malachi Griffith et al. CIViC is a community knowledgebase for expert crowdsourcing the clinical interpretation of variants in cancer. Nature Genetics volume 49, pages170–174 (2017) CrossRef